思い出サクランボ
大塚愛、という歌手がいました。
と、こう書くとあたかも故人のようになるんで気を付けないといけないし、
あるいは生きてても、そういえばそんな人いたなぁうんいたいた。
と、ある種の哀しさにもに似た表現になってしまって、
一部のコアな愛たんファンから「死んで詫びて欲しい」という歪んだラブメールで僕のメールBOXがパンクしてまうので気を付けないといけません。
そうではないんです。
僕の「いた」というのはもっと感覚的な話。
時は遡ること大学時代。
当時の僕達の生活といえばそれはもう荒んでおりまして。
例えば今時の若者を、街角でインタビューとかしたらね、
「学生時代?ははは、もうバイトしまくったよねー。ほんと。楽しかったなー。学生のときのが稼いでたっしょ。あとコンパね。」
とかどや顔で答えるヤング達がよくいますが、
その点僕らといえばね、
「学生時代?ははは・・・。」
で終わるレベル。
あれ、なんか暗くない、ディスプレイ。すごく暗い。どうしたんだろ。
まぁとにかく、先の学生たちが夜になるとクラブに集まってハーブをキメてる裏番組で、
僕達は夜になると友人宅に集まって麻雀するかゲームするか決めるような青春時代だったんです。暗い。
それで、当時の僕らの聖地の一つが、B君宅でした。
このB君というのが、なかなか味わい深い友人でして。
2chから始まり、駆け出しのアイドルやアニメ、漫画といったサブカル臭のムンムンするトピックに非常に造詣が深い人間といいますか。
よくこういう人間をさして「オタク」と低俗に一括りにされがちですが、
B君のソレは、言うならば一枚上。
ナウシカの金色の草原にヨロシク、オタクという草原からアタマ一つ抜けたナウシk
まぁいいや、とにかくオタクだったんです。
そんなB君がある日、どこから掘り出してきたのか一人のアイドルを見つけたらしく、
嬉々として僕らに教えてくれました。
「すげー新人が現れやがった」
それが、大塚愛でした。
♪愛しあうーふたーりーしーあわせーの空ー。とーなり同士ーあなたとあーたしさくらんぼー♪
このときの衝撃といったら。
子供の喧嘩に、親が核ミサイルもって全裸で参戦してきたくらいの衝撃。
それからはもう狂ったようにエンドレス大塚愛。
聞きすぎて夜寝る時とかもアタマの中グルグルさくらんぼで、「もう一回」が終わらない。
「一曲でこの中毒性は異常。将来ヤバイわコレは。大塚愛の時代くるで。」
それが僕らのガチの見解でした。
あれから数年。
僕らのガチの見解は、ガチでフェードアウトをお迎えし。
気づけば彼女もめでたくRIPの誰かとガチっと結合、じゃなくて結婚してしまいました。
だいたい誰だよスー って。釣りバカか。
まぁそうは言っても仕方ない、これもまた一つの青春の終わり方なのでしょう。な、B君。俺たち独身貴族は貴族らしく気高く生きようぜ。
とワイングラス片手に合意を求めるも、返答は一通の手紙。
「この度結婚することになりました」
うおい!
そういう訳で、僕の青春時代の親友のB君がめでたくこの度結婚することになりまして。
これはイカンと思って式をぶち壊、えっとお祝いするために先日は久々に名古屋いってまいりました(今日の内容ここから)
しかしもうね、月並みですがなんちゅーか皆変わらないのね。
式から二次会、三次会と色んな懐かしい人に会いましたが、全然普通。何みんなもしかしてクローンなの?
そら数年レベルで変わってたらポケモンの進化並みでしょうが、それでも昨日まで会ってたレベルで変わらないのは異常。
僕なんて自分の枕の加齢臭が日一日と味わい深くなってきてる気がしてならない今日この頃なんですけど。
それでまぁ変わらないのは外見だけじゃなくて。
やっぱりみんなよく喋って、よく笑う。あれ、やっぱ昨日会ってたっけ?クローンだっけ?とかそんな感じ。
でも、そんな中でも一番笑ってたのはやっぱり新郎新婦で。
B君は一日中幸せそうでした。
B君、ほんまにおめでとう。僕も嬉しいです。
そうそう、式でご両親に挨拶するときに、
大学時代にB君のお母さんがB君宅に掃除に来ると急遽わかって、僕が買ってB君の家に放置してたエロ本の救出作戦がどんなに困難なミッションだったかをアツく語ろうかと思ったけど、やっぱりやめといたよ。
あろうことか熟女系だったね。間違えたんだよね、コンビニで。
お母さんによろしくお伝えください。
帰りの電車。
祭りの後はやっぱりどこか寂しくて。
「またね」と告げて別れたみんなだけど、
多分もう会う機会もない人も多い。
そう思うととたんに寂しくなり、あんなに変わってないことに驚いたのに、
やっぱり時間は哀しくも無情に過ぎ去ったんだなぁと。
皆それぞれ色んな人生を歩みながら変わってるんだなぁと実感。
今日の僕はまぁこんな事を考えてるわけですが。
あの日の僕は何を感じて、何を思い悩んでいたんでしょうか。
そして今のこんな気持ちもきっといつか忘れてしまうんでしょうか。
寂しいね。
そんなことを考えながら、ついウトウトとまどろんでいたら、
イヤホンから流れてきたのはあの日と全く変わらない大塚愛の「さくらんぼ」。
その瞬間、懐かしい当時の感性や、流れていった日々が
ふっと微かに香ったような気がして。
一人車窓を眺めて、ふいに笑いがこぼれてきました。
ふふふ。
なにこれキモい。
疲れてんのかしら。
まぁなんちゅーか、B君、新しいアイドルと二人で、変わらずにずっと仲良くやってください。
お幸せに。